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2009年5月

栗本薫先生の訃報を聞いて

大変ショックです。心よりお悔やみ申し上げます。

思えば、今となっては空気のような量子力学に惹かれたきっかけも、中学時代読んだ「僕らの時代」シリーズで名探偵の謎の台詞「好奇心、猫を殺す」が気になったサブリミナル効果からだったのかもしれません。「魔界水滸伝」も「伊集院大介」シリーズも好きでした。「グイン・サーガ」は初めの10巻くらいしか読んでいませんが、後書きが印象に残っています。中学生の頃、古典文学全集や教科書よりは栗本先生の作品に、心の核に近い部分を育てられた気がします。

とりわけ悲しいのは、このように好きな作家でありながら、中学生の頃ただ一度伺った、サイン会のときしか売り上げには貢献できなかったことかもしれません。専門の理工系書籍は数式や証明を追わなければならないので、小説を読むよりは数十倍の時間がかかります。ですが小説や雑誌は、図書館で2週間の貸し出し期間があれば、あるいは館内でその場で、読めてしまうので、自分で買ったことはあまりないのです。

似たことは、「ブルーバックス」シリーズについても言えます。私はこのシリーズの多くを、高校の図書館で借り、電車の中や家で読みましたが、買った事はありません。内容は気軽にさらさら読めて、それまでの世界観を変えるようなものなので頭に残っても、著者名は忘れてしまいがちです。このシリーズで何冊かを書いてご活躍されたらしい「都筑卓司」先生の訃報を見たときも、悲しかったです。また一人、大切な人がお礼を伝える前にいなくなってしまいました。人生の糧となるような内容ですが、結局、本でしか出合えなかった人達。青春をともに過ごした S.Weinberg も、もしかしたら本を通じただけの関係になってしまうのかと、今から心配でなりません。

もちろん、大学からは教科書を自分で買うようになったのですが、図書館での著作権というのはどうなっているのでしょう?借りた人の人数に合わせて適切に印税が分配されるような仕組みがあれば良いのですが。しかし中・高校時代に図書館で読んだ本に学んだ科学的常識のほうが、大学院で権威ある教授達が宣伝する、誤っていそうな研究よりまともだなんて、読んだ当時は思いもしませんでした。自分の作り出した空虚な理論を宣伝し、その中で閉じている、奇妙な世界・・・。そんな大学院もあったとは。

ところで、わずかな経験上、がんに若くしてなるというのは、なぜか優しい人が多いようにも思います。私が知っている人でがんになったのは、皆特別なほど親切で、八つ当たりしたりしない、優しい人達でした。もしかしたら、病魔にさえ優しくなりすぎてしまったからがんになってしまったのでは、とすら思います。だから人間、優しすぎるのも問題で、少しは愚痴でも言ってストレス発散するほうが、幸せに生きられるのでは、とも思います。がんではなかったと思いますが、ある種の病気には、罹りやすい性格が知られているそうです。オカルトに興味はありませんが、拙い専門外の知識によれば、免疫というのは胸腺というスパルタ教育機関で育てられるそうですし、心も影響するのでは、と思います。どこまで科学的に解明されているのでしょうか、知りたいものです。

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ふざけたコメントを下さった方へ

おそらく、そんなに悪気はないのだと思います。むしろ宣伝しようとして下さっているのかもしれません。ですが、あれは、昔から伝えられているニュアンスを原典に忠実に再現しただけで、決して動機がふざけていたわけではありません。 J.J.Sakuraiの「現代の量子力学」あとがきにも、
「結婚式で 'Have a lot of vector mesons !' と祝われた」
とありますし、核反応でできた新しい核のことを「娘核」ともいうように、昔から素粒子は人格を持って扱われてきたのです。多少、大人向けのところもあるかもしれません。

ですが、私が憧れた最先端の科学技術は、そんなものではない。別に賛成しているとは言いませんが、現在、原子力発電所をまともに造れて、無事に動かせる日本人が、私たちの世代に何人いるでしょう?もしかしたら、いないのでは。使用済み核燃料の処理も、誰かがやらなければいけないことなのに。私の在学中には、JCOの事故の当事者となった方が、理学部近くの大学病院に入院していました。気のせいか素粒子実験が専門の先生方は若干がんになりやすいようにも見受けられましたし、私自身、有害とわかっていて放射線実験もしました。おそらく、大学紛争のせいで、かなり技術の断絶が起きたのではないかということも危惧します。今の日本に、月旅行をできるほどの技術があるとは思えません。

不幸にして、私が東大の理学系物理学専攻で出会った一部の(とくに大学紛争時に在学近かった年代の)教授たちは詐欺のような理論ばかり宣伝して科研費を稼ぐだけに見えました。殆ど現実に有益な教えを受けることはできなかったように思います。(まあWeinbergの書物を紹介してくださったのは指導教官ですが、ノーベル賞受賞者なのですから別に指導教官でなくても推薦したでしょう。)昔から教科書を読んで自習する性質でしたが、教科書に実験事実と反するような誤りがあったのではないかと今も思っています。ためしに、最近復刊された名著(ディラック現代物理学講義)をご覧いただければ、東大ではモノポールなど怪しげな、ありもしなさそうなものが何十年も前から研究されてきたことがお分かりでしょう。

KEKの実験では、同年齢くらいの若い工学系院生が
「この装置は数千万円の科研費を使って自分が作った」
と言っていたので
「私も工学部に行っていればよかったのだろうか。行けるだけ充分な成績はあったのに」
と後悔したこともあります。私の進学した頃、物理学科は比較的人気があって、たとえば私の成績だと工学部なら航空宇宙工学科は厳しいが、ほかは大体どこへでも進学可能でした。しかし、物理学科では学部で「統計力学」「量子力学」のような比較的古い基礎的な科目を少数しか履修できない(重複履修となってしまう。私は他学科受講も試みましたが)のに対し、工学部では、現実的な講義が多数、細切れに入っています。物理学科では、大学院でないとまともに研究できる内容に入れないようになっているのです。だから卒論もありません。素粒子理論は人気がありましたが、研究員にすら採用されなかった私の場合、博士課程で任せてもらえたのは、図書係で20万円、皆の要望を聞いて蔵書をそろえることくらいでした。海外の学会に出るための旅費補助も不許可でした。身も蓋もないようですが、ノーベル賞の件で却って被害者が増えませんように、正直な感想を述べてみました。

科学技術である以上、文体自体に価値はほとんどなく、問題は科学的事実か否かです。結果がすべて。大卒後7年間、騙され卒業を延ばされ不名誉を負わされた形で、年収15万円程度でしかなく、今も、本来志望していた研究職に就ければ返還義務はなかったはずの奨学金あと400万円を返済中です。プロフィールをご覧になればわかるとおり、現在も
「なぜ、詐欺教授たちが得をして、本当と思われる主張をした私だけ、こんな目に遭わなければならないのか?」
と眠れないほどの被害を受け続けています。

その意味で、LHC実験で「超対称性粒子」が見つからなかったら、冗談では済まされない組織的な詐欺犯罪であり、これを口実として多額の科研費を得てきた教授たちには、弁償してほしい、と 5年位前から言い続けているのです。まあもし提訴するなら国家を告訴することとなり、現実的ではないかも知れませんが。現状について、 非常勤講師「使い捨て」の悲惨や、 ポスドク活躍の道を組織的にのとくに
『私は、これは若者に対する政策側の一種の詐欺だ、と言っている。「あなたたちがいないと研究ができない」と言って研究者にしておきながら、研究がある程度、成立して35歳くらいになった時に、行くところがない。これは大変けしからん話だ。』
は、良いことを言っていると思います。私はポスドクにすらなれませんでしたが、長年のアカデミックハラスメントの被害は到底頭から消し去れるものではなく引き続き公開しなければと思っております。

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